2026年2月1日日曜日

【読書録】『職分』:練られたストーリーと、理想的な師弟関係が光る短編集。

 今野敏さんの作品は、本当に「上手いなぁ、面白いなぁ」と思わせられます。本作は、窃盗の専門家である萩尾警部補と、その若き女性部下が事件に挑む7つの短編が収められた一冊です。


■ 書籍情報

  • 書名: 職分

  • 著者: 今野 敏


[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

職分 [ 今野敏 ]
価格:1,870円(税込、送料無料) (2026/2/1時点)


■ お勧め度

★★★★☆(星4つ) 上手いなぁ、面白いなぁと思わせる短編集。



1. 趣向を凝らした7つの窃盗事件

本作には7つの短編が収録されていますが、どの物語も設定や内容が異なり、どれも非常に興味深いです。窃盗事件に関わっていくプロセスが緻密に練られており、短編ならではの良さが存分に出ています。

2. 惹きつけられる理想的な師弟関係

主人公の萩尾警部補と若き女性部下の「理想的な師弟ぶり」には、強く惹かれるものがあります。現実にはありえない関係かもしれませんが、それだけに魅力があり、二人の関係性に惹きつけられます。

3. 引き締まった文章の読みやすさ

今野氏の引き締まった文章は、非常に読みやすいです。無駄のない筆致が物語のテンポを良くしており、その文章の巧みさが「上手いなぁ」と感じさせる大きな要因となっています。

4. まとめ:もっと続きが読みたくなる面白さ

バラエティに富んだストーリー、魅力的なキャラクター、そして読みやすさ。今野氏の「上手さ」を堪能できる一冊です。7つの短編をすべて読み終えても、なお「もっと続きが読みたい」と思わせる満足感がありました。



2026年1月31日土曜日

【読書録】『夜刑事』:これぞ大沢在昌!特殊設定でもブレない「極上の人探し」ミステリー

 「もし、太陽の下を歩けない世界になったら?」 そんなパンデミック後の特異な世界を描きながら、中身は超一級のハードボイルド。今回ご紹介するのは、大沢在昌氏の**『夜刑事(よるでか)』**です。

設定こそ特殊ですが、読み味は「これぞ大沢作品」という安定感。大ファンの方も、初めての方も、ページをめくる手が止まらなくなるはずです。



■ 書籍情報

  • 書名: 夜刑事

  • 著者: 大沢 在昌


[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

夜刑事 [ 大沢 在昌 ]
価格:1,980円(税込、送料無料) (2026/1/31時点)



■ お勧め度

★★★☆☆(星3つ)

「ハズレなし」の職人芸。特殊な世界観と、王道の探偵要素が絶妙に融合した一冊。




1. 大沢在昌・得意の「人探し」に引き込まれる

本作の舞台は、紫外線に当たると死に至る感染症が発生し、人々が「昼」と「夜」に分断された世界。主人公は、その夜の街で活動する「夜刑事」です。

大沢作品の真骨頂といえば、何といっても**「人探しの物語」**。 人々のつながりから、足で情報を稼ぎ、少しずつ真相に近づいていくプロセスは、どれほど世界設定が変わっても健在です。400ページを超えるボリュームですが、複雑に絡み合う謎が解けていく快感に、一気に読み進めてしまいます。


2. 謎の美女、強烈な個性……魅力的なキャラクター陣


ハードボイルドに欠かせないのが、主人公を取り巻く魅力的な登場人物たち。

  • 孤独な主人公: 夜にしか生きられない宿命を背負いながら、己の正義を貫く姿。

  • 謎の美女: 主人公の前に現れる、物語の鍵を握る女性。彼女の存在が物語に色気と緊張感を与えます。

こうした「キャラクターの立ち方」が、さすがは大御所の筆致。登場人物に感情移入できるからこそ、物語の世界にどっぷりと浸れます。


3. 「感染後の世界」という、妙にリアルなリアリティ


本作のもう一つの読みどころは、感染症によって一変した社会の描写です。

  • 夜にしか動けない人々の生活習慣

  • 昼の住人と夜の住人の格差

  • 崩壊したようでいて、どこか秩序を保つ社会の空気

この**「少し歪んだ日常」**の描写が妙にリアルに響きます。そんな過酷な世界でも、必死に生きる人々の生活感には、どこか現代に通じるものを感じました。




■ まとめ:さすがの読みやすさと安定感

400ページ超という厚さを全く感じさせないのは、大沢さんならではの「読ませる力」があるからこそ。

じっくりとこの「夜の世界」に浸ってみるのをお勧めします。

やはり、大沢在昌にハズレなし。そう再確認させてくれる一冊でした。







2026年1月12日月曜日

【読書録】『腐ったバナナを捨てる法』:現状を変えたい中高年サラリーマンへ贈る、執着を手放すための処方

「今の環境で、定年までこのままでいいのだろうか……」 「長年頑張ってきたが、ここはもう自分が輝ける場所ではないのかもしれない」

そんな葛藤を抱えながらも、これまでのキャリアや立場を思うと、どうしても保守的になってしまう。そんな現状に悩む中高年のサラリーマンの方に、ぜひ手に取ってほしい一冊をご紹介します。


■ 書籍情報

  • 書名: 腐ったバナナを捨てる法

  • 著者: 荒木 真一郎

 

■ お勧め度

★★★(星3つ) 「理屈はいいから、背中を押してほしい!」という時に最適な、シンプルでパワフルな一冊。



1. 「我慢」はもう十分。その場所で頑張り続ける意味はあるか?


私たちは長年、組織の中で耐えること、順応することを美徳として生きてきました。しかし、本書は次のような衝撃的なメッセージを突きつけます。

「ダメな所では、いくら頑張ってもダメ。今いる所から、自分が望む所へ行くためには、勇気をもって現状を捨てろ」

20年、30年と会社に貢献してきた自負があるからこそ、「今さら場所を変える」ことには大きな抵抗があるでしょう。しかし、もし今いる場所がすでに**「腐ったバナナ」**のような環境(成長がなく、ストレスばかりが溜まる場所)だとしたら、そこでどれだけ努力を重ねても、新しい果実を得ることはできません。


2. 自分を変えるには、知識よりも「勇気」が必要


この本が説いているのは、小手先のテクニックではありません。現状を捨てるための**「心構え」と「行動指針」**です。

中高年になると、守るべきものやプライドが邪魔をして、変化を恐れてしまいます。しかし、自分を変え、新しい人生のステージに進むために一番必要なのは、高度なスキルではなく、**「今握りしめているものを手放す勇気」**なのだと気づかされます。

「現状を捨てろ」という言葉は一見過激ですが、それはあなたのこれまでの努力を否定するものではありません。むしろ、**「あなたのエネルギーを、もっとふさわしい場所で使うべきだ」**という温かいエールのように感じられます。


3. まとめ:後半戦を「自分らしく」生きるために


とにかくメッセージが単純で力強い。余計な理屈がないからこそ、迷いの中にいる心に真っ直ぐ響きます。

「自分を変えたい。でも、どう動けばいいかわからない」 そんな不安を抱えているなら、この本がその一歩を後押しする大きな助けになるはずです。

よい本だ。 そう素直に思える一冊でした。 残りのキャリアを、腐ったバナナを握りしめたまま終えるのか、それとも勇気を持って手放し、新しい場所を探すのか。そのヒントがここにあります。





【読書録】『鋼鉄の城塞』:あの頃の熱量を思い出す。戦艦大和に一生を捧げた男の「青春とお仕事」

「不可能なことに、仲間とがむしゃらに挑んでいた時期が自分にもあった――」 今回ご紹介する柳広司氏の**『鋼鉄の城塞』**は、そんなかつての情熱を思い出させてくれる、圧倒的な熱量を持った一冊です。

著者への信頼感はもともとありましたが、本作もまさに「ハズレなし」。500ページ近いボリュームを感じさせないスピード感で、最後まで一気に駆け抜けました。

■ 書籍情報

  • 書名: 鋼鉄の城塞

  • 著者: 柳 広司(やなぎ こうじ)


[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

鋼鉄の城塞 ヤマトブジシンスイス [ 伊東 潤 ]
価格:2,420円(税込、送料無料) (2026/1/12時点)


■ お勧め度

★★★★☆(星4つ) 仕事への誇りと、青春の青臭さを同時に味わえる「究極のお仕事小説」です。


1. 「不可能」を形にする。エンジニアたちの泥臭い挑戦

物語の舞台は、戦艦大和の建造から、その最期まで。京都大学を卒業したエリート軍人の主人公が、仲間と共に、当時の技術では不可能と言われた巨大戦艦の建造に挑みます。

巨大なプロジェクトを動かす苦労、細部へのこだわり、そして完成への執念……。その過程は、私たちが若かりし頃、がむしゃらに仕事に打ち込んでいた時代の感覚を呼び起こします。今の自分たちが忘れてしまった「純粋な熱量」が、ここにはあります。


2. 組織の対立、時代の波、そして「人殺しの道具」を作る葛藤

本作の深みは、単なる成功談に留まらない点にあります。

  • 組織の壁: 「大砲こそが主役」という旧来の考えと、新しい「航空戦」の時代の対立。現代の企業活動にも通じる、組織のしがらみがリアルに描かれます。

  • 技術者の矜持: 「世界一の船を作りたい」というエンジニアの夢と、「それは人を殺す武器である」という残酷な現実の板挟み。

  • 時代の空気感: 当時の日本の閉塞感やスパイ事件、その中で揺れる淡い恋のエピソード。

これらが複雑に絡み合い、お仕事小説でありながら、壮大な青春群像劇としても成立しています。


3. まとめ:もう一度、心に火を灯したい時に

500ページという長さを感じさせないのは、著者の圧倒的な描写力と、登場人物たちの生き様が真っ直ぐだからでしょう。

若き軍人が大和と共に歩んだ一生を見届けた時、読者である私たちの胸にも、**「仕事に就いたばかりの頃の、あの懐かしい熱量」**が静かに灯るはずです。

本当におもしろかった。 毎日を淡々とこなしている同世代のサラリーマンにこそ、この興奮を味わってほしい。そう思える力作でした。






2026年1月11日日曜日

【読書録】『単身リスク』を読んで:社会分析は鋭いが、個人の「解決策」には踏み込み不足か

来への不安が尽きない「人生100年時代」。特にこれからの単身生活にどのようなリスクがあるのか、その正体を知りたくて本書を手に取りました。

著者は社会学の第一線で活躍される方であり、データに基づいた日本の現状分析は非常に説得力があります。しかし、一人のサラリーマンとして「これからの指針」を求めて読むと、少し考えさせられる部分がありました。



■ 書籍情報

  • 書名: 単身リスク ―「100年人生」をどう生きるか

  • 著者: 山田 昌弘

 

■ お勧め度

★★☆☆☆(星2つ) 日本の社会構造を俯瞰するには良いが、個人の具体的なアクションプランを期待すると肩透かしを感じるかもしれません。

1. 「リスクの可視化」と統計データ

本書の読みどころは、膨大な統計資料や社会制度の変遷をもとに、現代の日本人が直面している「もしもの事態」を浮き彫りにしている点です。

「これから日本社会はどう変わるのか」「かつての常識がなぜ通用しないのか」といったマクロな視点での現状把握は非常に緻密です。社会全体の動きを冷静に、客観的に理解したいという目的であれば、これほど情報量の多い本は他にないでしょう。


2. 「現状分析」の先にある、解決策の希薄さ

ただ、読み進めるうちに「では、具体的にどうすればいいのか?」という疑問が膨らんでいきました。

本書は、社会制度の不備や将来のリスクをひたすら説明してくれるのですが、提示される対策は、どちらかといえば一般論の枠を出ない印象を受けます。 「もしもを常に考えよう」といった心構えや、国・自治体のレベルで論じられる政策論が中心であり、「明日から自分の生活をどう変えるべきか」という個人的な解決策については、やや踏み込みが薄いと感じてしまいました。


3. まとめ:現状を知るための「白書」として読む一冊

本書は、個人の不安に寄り添う「ハウツー本」ではなく、日本社会の課題を整理した「社会分析本」として捉えるのが正解かもしれません。

現状のリスクを正確に知ることは大切ですが、そこから一歩進んで「自分はどう生きるか」という具体的な勇気や知恵を求めていた私にとっては、少し物足りなさが残る読後感となりました。

知識として社会の構造を整理したい時には価値ある一冊ですが、**「実生活に直結するヒント」**を探している方は、他の実践的な本と併読するのが良いかもしれません。




2026年1月10日土曜日

【読書録】『天海の秘宝』:幕末を駆ける浪人。夢枕獏が描く伝奇ミステリー、その「盛りだくさん」な読後感


幕末、江戸の町を舞台に、伝説の秘宝を巡る陰謀が渦巻く——。 今回ご紹介するのは、夢枕獏氏による伝奇アクション**『天海の秘宝』**です。 夢枕作品らしい、躍動感あふれる筆致で描かれる幕末ミステリーですが、一読者として「ここは少し好みが分かれるかも」と感じます。 

■ 書籍情報

  • 書名: 天海の秘宝

  • 著者: 夢枕 獏


[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

天海の秘宝 上 (徳間文庫) [ 夢枕獏 ]
価格:836円(税込、送料無料) (2026/1/10時点)


■ お勧め度

★★★☆☆(星3つ) 夢枕ファンならずとも引き込まれる幕開け。ただ、物語の「密度」が非常に高く、評価が分かれる一冊。



1. 気のいい浪人が巻き込まれる、江戸の闇


物語の主人公は、江戸の町で近所の子供たちに読み書きを教えて暮らす、気のいい浪人です。

その穏やかな日常を切り裂くように発生する、凶悪な押し込み強盗や謎の辻斬り事件。主人公がその謎を追い始めるうちに、徳川幕府の知恵袋・天海僧正が遺したとされる「秘宝」を巡る巨大な争いへと足を踏み入れていきます。夢枕獏氏、読み手を飽きさせません。


2. 圧巻のスケール、ゆえの「ごちゃごちゃ感」?


読みどころは非常に多い作品です。

  • 謎の辻斬りと、その裏に潜む敵の正体

  • 主人公自身の過去に隠された大きな秘密

  • 幕末の歴史の裏側に絡む「天海の秘宝」の謎

ただ、正直な感想を言えば、**「少し要素を詰め込みすぎ」**な印象も受けました。登場人物もエピソードも非常に多く、物語の軸がどこにあるのかを追いかけるのが・・・です。


3. まとめ:結末の「種」をどう受け止めるか


物語の核心である「秘宝の正体(種)」についても、読後感に大きく影響するポイントでしょう。個人的には、そこまでの壮大な盛り上がりに対して、「その着地は、ちょっと……」と、好みが分かれる部分だと感じました。

もちろん、おもしろい力作であることは間違いありません。 夢枕獏さん特有の、血湧き肉躍る伝奇世界を堪能したい方にはお勧めです。ただ、もう少しシンプルに物語の芯を味わいたかったな、というのが率直な感想でした。






【読書録】『ChatGPTのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書』:仕組みと技術を「しっかり」説明。納得の満足感。

ChatGPTの仕組みと技術について、タイトル通りしっかりとした説明がなされている一冊です。

概要や機械学習の仕組みはあえて軽く触れるに留め、技術の変遷や核心部分を丁寧にさらっています。初心者向けにやさしく書かれていますが、ボリュームもあり、満足できる内容でした。

■ 書籍情報

  • 書名: 図解即戦力 ChatGPTのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書

  • 著者: 中谷 秀洋



■ お勧め度

★★★★☆(星4つ) タイトルどおり、仕組みと技術をしっかり説明。


1. 文書と図で「しっかり」わかる解説

本書は技術の仕組みを説明するにあたって、数式はほとんど出てきません。 その代わりに、文書と図によってしっかりと説明されているのが特徴です。初心者向けにかなりやさしく書いてあるため、無理なく読み進めることができます。

2. 自然言語処理の歴史とTransformerの理解

読みどころは、自然言語処理の歴史と技術、そして「Transformer」の説明です。 ChatGPTの概要や機械学習の仕組みについては軽く触れる程度ですが、この自然言語処理の系譜とTransformerの仕組みについては丁寧に説明されています。

3. まとめ:ボリュームもあり満足できる一冊

初心者向けのやさしい記述でありながら、決して内容が薄いわけではありません。むしろボリュームもしっかりとあり、一冊を読み通した後の満足度は非常に高いものでした。

「ChatGPTの技術的な背景を一度さらっておきたい」 そう考えている方にとって、ポイントが丁寧に押さえられた、非常に納得感のある一冊です。