「不可能なことに、仲間とがむしゃらに挑んでいた時期が自分にもあった――」 今回ご紹介する柳広司氏の**『鋼鉄の城塞』**は、そんなかつての情熱を思い出させてくれる、圧倒的な熱量を持った一冊です。
著者への信頼感はもともとありましたが、本作もまさに「ハズレなし」。500ページ近いボリュームを感じさせないスピード感で、最後まで一気に駆け抜けました。
■ 書籍情報
書名: 鋼鉄の城塞
著者: 柳 広司(やなぎ こうじ)
■ お勧め度
★★★★☆(星4つ) 仕事への誇りと、青春の青臭さを同時に味わえる「究極のお仕事小説」です。
1. 「不可能」を形にする。エンジニアたちの泥臭い挑戦
物語の舞台は、戦艦大和の建造から、その最期まで。京都大学を卒業したエリート軍人の主人公が、仲間と共に、当時の技術では不可能と言われた巨大戦艦の建造に挑みます。
巨大なプロジェクトを動かす苦労、細部へのこだわり、そして完成への執念……。その過程は、私たちが若かりし頃、がむしゃらに仕事に打ち込んでいた時代の感覚を呼び起こします。今の自分たちが忘れてしまった「純粋な熱量」が、ここにはあります。
2. 組織の対立、時代の波、そして「人殺しの道具」を作る葛藤
本作の深みは、単なる成功談に留まらない点にあります。
組織の壁: 「大砲こそが主役」という旧来の考えと、新しい「航空戦」の時代の対立。現代の企業活動にも通じる、組織のしがらみがリアルに描かれます。
技術者の矜持: 「世界一の船を作りたい」というエンジニアの夢と、「それは人を殺す武器である」という残酷な現実の板挟み。
時代の空気感: 当時の日本の閉塞感やスパイ事件、その中で揺れる淡い恋のエピソード。
これらが複雑に絡み合い、お仕事小説でありながら、壮大な青春群像劇としても成立しています。
3. まとめ:もう一度、心に火を灯したい時に
500ページという長さを感じさせないのは、著者の圧倒的な描写力と、登場人物たちの生き様が真っ直ぐだからでしょう。
若き軍人が大和と共に歩んだ一生を見届けた時、読者である私たちの胸にも、**「仕事に就いたばかりの頃の、あの懐かしい熱量」**が静かに灯るはずです。
本当におもしろかった。 毎日を淡々とこなしている同世代のサラリーマンにこそ、この興奮を味わってほしい。そう思える力作でした。
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