『サーラレーオ』:新庄耕が描く悪。破滅へ突き進むクズたちの狂騒曲

『サーラレーオ』:新庄耕が描く悪。破滅へ突き進むクズたちの狂騒曲


■ お勧め度

★★★☆☆(星3つ) 悪漢小説の醍醐味が詰まった一冊。現実逃避したい時に。「こんな人生もあるのか……」と、自分とは無縁のはずの世界に引きずり込まれる感覚を味わえます。

 

主人公はタイで麻薬を売買する若い男。ある麻薬の種を手に入れたことから、日本で仲間とともに大規模な栽培と売買の計画を始動させますが……。
道徳のかけらもない悪党たちが、破滅へと向かって突き進むピカレスク・ロマンです。


1. 「悪を書かせたら天下一品」新庄耕が描くクズたちのリアリティ


主人公、同棲する女、そして仲間たち。登場人物が驚くほど全員「クズ」です。
道徳観がなく、人を騙すことも平気。そんな救いようのない人々を、新庄耕さんは天下一品の筆致で描き出します。
彼らの言動があまりにリアルで、まるで実在する悪党たちの物語を覗き見ているような生々しさを感じます。

2. 悪漢小説ならではの面白さ:日常を忘れる「現実逃避」


常に死や破滅が隣り合わせにある、危機的状況の連続。
現実ではまず味わうことのない恐怖感、焦燥感、そして悪党どもの奇妙な連帯と冷酷な騙し合い。
「こんな人生もあったのか……」と圧倒されるうちに、日常の悩みなど忘れて物語に没入できる、最高の現実逃避になります。

3. むせ返るような熱気。タイの暗黒街という異世界


本作の大きな読みどころは、タイの暗黒街の生々しい描写です。
街の様子、そこにうごめく人々、そして日本とは全く異なる不穏な空気感。
私たちが一生体験することのないであろう、未知で危険な世界のディテールは非常に興味深く、物語に圧倒的な深みを与えています。

4. まとめ:一度浸かると抜け出せない、破滅の「中毒性」


『サーラレーオ』は、単なる犯罪小説ではありません。危機や破滅に向かう悪党たちの生き様には、抗いがたい「中毒性」があります。
読み進めるうちに、彼らのろくでもない人生が、なぜか他人事とは思えなくなってくる不思議な感覚。
読後にじわじわと毒が回るような、独特の読書体験を楽しみたい方にぜひおすすめしたい一冊です。



コメント

このブログの人気の投稿

読書 名著100冊から「すごい時間のつかい方」を抜き出して1冊にまとめました

読書 ある翻訳家の取り憑かれた日常2

読書 異端の祝祭